誰もが期待していなかった。
町から酒蔵の灯が消えようとしていた。
予想以上に、蔵内は汚かった。
予想以上に、設備が無かった。
予想以上に、状況は悪かった。
予想以上に、予想以上に。
ただ、美味しいと言ってもらえる酒を造りたかっただけだ。
ただ、一生懸命な蔵人の期待に応えたかっただけだ。
ただ、この町から酒蔵の灯を消したくなかっただけだ。
必ず、この蔵を再建して見せる。
必ず、この町を元気にして見せる。
だって、大森町には大納川があるじゃないか。
蔵人五人でも出来る事がある。
全力で努力する者を人生は裏切らない。
そう信じて、今日も米と酒と語り合う。
人生を考え直す大きな出来事から
一度は酒造りから離れたけれど、
それでも
みんなの応援に応えたくて、
みんなの期待に応えたくて、
尊敬する人と、
信頼する人と、
酒造り(町づくり)をスタートした。
不安しかなかったけれど、
目の前のひとつひとつを積み重ね、
ようやくみんなに届けられる
その嬉しさと、
みんなからの「美味しい」の一言で
ボクは頑張れる。
いつか恩返しが出来ると信じて
これからも酒造りと向き合い、
そしてみんなに届けたい。
酒づくりに携わる人たちに
代々受け継がれてきた
大切にしている言葉のひとつ
「和醸良酒」
この言葉にはふたつの意味があります。
和は良酒を醸す。良酒は和を醸す。
大納川の蔵人たちは
昔ながらの伝統と手造りにこだわり、
手間隙をかけて醸した酒を
おいしいと言っていただけるよう、
我が子を育てる様に
今日も醪に語りかけています